研究内容

糖鎖固定化ナノ粒子を利用した疾患診断法の確立

糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(SFNP)を用いた疾患関連抗糖鎖抗体の簡易検出

図10. 糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子 (SFNP) を用いた抗ガングリオシド抗体の簡易検出

 糖鎖固定化ナノ粒子は、複数の糖鎖結合部位を有するタンパク質と凝集反応を起こすため、その凝集体を観察することで目視で簡単に相互作用を解析することができます。そこで、このような性質を持つ糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(SFNP)を応用して、疾患に関連する抗糖鎖抗体を目視で迅速簡便に検出する方法を開発しました。これまでに、ギラン・バレー症候群※1と呼ばれる自己免疫疾患の患者血清中で多く検出される、糖脂質のガングリオシドに対する抗体を感度良く簡便に検出できることを見出しています。この方法は、SFNP溶液と血清を混合するだけで、数時間以内に疾患に関連する抗体を検出できます。そのため、現在検査に利用されているELISA法と比べ、短時間かつ簡便に検査できることが特徴です。また、固定化する糖鎖の構造を変えることで、抗糖鎖抗体が関与する他の疾患への応用も可能なことから、今後、様々な疾患に対する新たな迅速診断法になると期待されています。

※1 ギラン・バレー症候群 …急速な手足の運動麻痺を示す神経・筋疾患で、10万人に1人の指定難病。主に細菌の感染によって引き起こされると考えられており、感染した細菌に存在する糖鎖と生体内に存在する糖鎖の構造が類似していると、感染した細菌に対して生じた抗体が、自己の正常な細胞に対しても攻撃する自己抗体となり疾患が引き起こされる。急速な手足の運動麻痺を示す神経・筋疾患のなかでも、最も頻度が高く、臨床現場ではしばしば脳卒中と誤診される。患者血清中には、糖脂質であるガングリオシドに対する抗体が検出されることが多く、ELISA法による補助診断が行われている。治療が遅れると死に至ることがあるため、早期診断による早期治療が重要だが、検査会社に依頼すると結果が分かるまでに数日から一週間程かかるため、オンサイトでも可能な迅速診断キットの開発が求められている。

<関連論文>
Shinchi H., et al., Visual detection of human antibodies using sugar chain-immobilized fluorescent nanoparticles: Application as a point of care diagnostic tool for Guillain-Barre syndrome. PLoS One 2015, 10, e0137966. doi: 10.1371/journal.pone.0137966

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