鹿児島大学大学院理工学研究科
工学専攻 化学生命工学プログラム

生命有機化学研究室 (若尾・新地研究室)

-Bioorganic Chemistry Laboratory-

研究内容

低・中分子糖鎖アジュバントの開発と感染症ワクチンアジュバントへの応用

TLR7リガンドを用いた低・中分子糖鎖アジュバント

 Toll様受容体 (TLR) は、自然免疫を活性化する重要な受容体の一つです。 近年、合成化学的手法を用いて、TLRに作用するさまざまなリガンド分子が開発され、これらを活用した抗ウイルス療法や抗がん免疫療法の研究が進んでいます。 特に、低分子化合物のTLR7リガンドとして、イミダゾキノリン類 (例:イミキモド) などが開発されており、免疫応答を強化するアジュバントとして注目されています。 さらに、低分子TLR7リガンドは、他の分子(脂質、糖鎖、ペプチド、タンパク質、ポリマーなど)と複合体を形成できる特性を持っています。 これにより、免疫応答を強化したり、全身性の炎症反応を低減させることが報告されています。
 免疫細胞の表面には、病原体や異物を認識する糖鎖受容体が存在し、これらの糖鎖受容体はTLRリガンドの免疫細胞選択的な送達に有効であると考えられています。 私たちは、低分子TLR7リガンドに糖鎖を直接結合させた低・中分子糖鎖アジュバントの開発に取り組んでおり、これまでに、合成低分子TLR7リガンド (1V209) とシクロデキストリンなどの糖鎖との複合体化を報告しています。 この新しい糖鎖アジュバントは、元の低分子TLR7リガンドに比べて免疫増強活性と水溶性を大きく向上させました。 現在、これらの糖鎖アジュバントを活用して、ウイルス感染症に対する粘膜ワクチンアジュバントとしての応用研究を行っています。

図. TLRの分布と免疫応答の流れ

図. 1V209-シクロデキストリン複合体 (グライコアジュバント)

<関連論文>

  • Baba A., et al., Synthesis and immunostimulatory activity of sugar chain-conjugated TLR7 ligands. Bioorg. Med. Chem. 2020, 30(3), 126840.
    doi.org/10.1016/j.bmcl.2019.126840
  • 若尾 雅広 他、TLR7 リガンド複合体の合成と免疫増強活性、 エンドトキシン・自然免疫研究 23, 2020, 28-33.
    第5章 一般演題

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