鹿児島大学工学部 先進工学科 化学生命工学プログラム環境化学研究室

化学物質探索システム

はじめに

化学物質探索システム(以下、本システム)は、国土交通省下水道応用研究「下水処理場における硝化阻害物質の高効率探索システムの開発」(参画機関:国立大学法人鹿児島大学、国立研究開発法人土木研究所、いであ株式会社)により開発されたシステムを、鹿児島大学・土木研究所・いであ共同研究体(以下、共同研究体)が改良したシステムであり、鹿児島大学工学部環境化学研究室が事務局を務める化学物質探索システム研究会(以下、本研究会)が運営しています。

本システムは、シングル四重極型GC/MSで網羅分析された結果、または高分解能LC/MSで網羅分析された結果をアップロードしていただくことにより、検出された可能性がある硝化阻害物質、生態影響物質、PRTR対象物質、日本において一定程度使用されている物質を探索します。どなたでも匿名かつ無償でご利用いただけます。探索結果の利用に制限はありません。

本システムのご利用のご利用の流れは下図のとおりです。


化学物質探索システム

GC-MS探索結果のイメージ
高分解能LC-MS探索結果のイメージ

データの書式が正しくないことなどが原因で、正しくアップロードできない場合があります。同様の理由で、解析結果が正しく表示されない場合があります。ご注意ください。

化学物質流出事故発生時の迅速スクリーニング分析

近年、頻発する豪雨水害に伴い、化学物質が河川などに流出する事故事例が見受けられます。将来、震災に伴って化学物質が流出するかもしれません。また、平時においても化学物質の流出事故が起きており、水生生物のへい死事例などが報告されています。そのような際に、本システムは有効と考えられます。

化学物質の流出事故が発生した場合、どのような化学物質が使われていたのかを可能な限り情報収集したり、色や臭いでどのような化学物質が流出したのかを推測して、推測された物質が検出されるか否かをGC/MSを用いて調査することが多いようです。しかし、収集できた情報にない化学物質が流出していた場合や、色や臭いで推測できなかった化学物質が流出していた場合には、それらの化学物質を見逃してしまいます

一方、GC/MSや高分解能LC/MSで網羅的に流出した化学物質を探索すると、情報の収集結果や、色や臭いによる判断結果によらず、イオン化できて分析の質量範囲内であれば検出できる可能性が高いと言えます。ただし、漏洩した化学物質に加えて、まったく無関係な物質が数多く検出されてしまうため、分析結果を適切に解析して探索する必要があります。

そこで本システムでは、日本において使用量が多い物質(下記「探索が可能な試料と物質」参照)や水生生物に強い毒性を有する物質(下記「硝化阻害活性クラス・生態毒性クラスの分け方」参照)を自動検索して適切な探索が行えるようにしています。聞き取り調査や臭いによる物質推定が不要なため、迅速に探索することが可能です。

漏洩物質推定に対する本システムの有効性

ポストキャリブレーション網羅分析

化学物質の流出事故以外でも、網羅的に化学物質を測定して、化学物質の濃度を分析することがあります。その方法には、予めターゲットとなる化学物質を決めておき、それらを一斉に分析するターゲット分析と、ターゲットを決めずに検出された物質の構造を推定するノンターゲット分析があります。ターゲット分析における化学物質の数には制限がなく、1物質の場合もあれば、何十万物質の場合もあります。物質数が多い時には、ターゲットスクリーニング分析(網羅分析)と呼ばれることがあります。従来のターゲットスクリーニング分析(網羅分析)では、時間・手間・コストのかかる前処理条件の検討、大量の検量線の取得や安定同位体ラベル化試薬を用いたマトリックス効果などの補正を行った後に網羅分析することがあったかもしれません。いざ、試料を分析した結果、不検出ばかりであった場合には、効率が良いとは言えないのではないでしょうか?

従来の網羅分析

このため、検出頻度が高い物質の精査などによってターゲットとなる物質数を削減し、検出実態に即した測定を行うポストキャリブレーション型のターゲットスクリーニング分析(網羅分析)が有効な場合があると考えられます。ポストキャリブレーションとは、後から校正すると言う意味です。時間・手間・コストのかかる校正作業を、検出実態に即して行うことにより効率化しようとする考え方です。

ポストキャリブレーション型の網羅分析

本システムは、その物質数の削減に有効と考えられます。本システムは、検出された可能性がある硝化阻害物質、生態影響物質、PRTR対象物質、日本において一定程度使用されている物質を探索しますので、ご関心をお持ちの物質が別表1(ログインすると確認できます)に収録されている場合には、是非、ご活用いただきたいと考えています。

IDとパスワードの請求

セキュリティー対策のため、ご利用にあたっては、IDとパスワードが必要です。ご利用を希望される方は、envchemkagoshimaアットgmail.com(アットを@に変更してください)までご連絡をお願いします。以下に、ID/パスワード請求メールの文例を示します。フリーメールアドレス、匿名で請求可能です。


件名:ID/PWD請求

化学物質探索システムの公開目的と注意事項を理解し、IDとパスワードを請求します。


IDとパスワードの有効期限はありませんが、予告なく本研究会が無効化することがあります。取得したIDとパスワードが無効になった場合は、お手数ですが、再度ご請求ください。なお、ユーザーによるパスワードの変更機能はありません。ご了承ください。

測定データの取得

シングル四重極型GC/MSで網羅分析された結果、または高分解能LC/MSで網羅分析された結果をご用意ください。条件は以下のとおりです。

GC/MSを用いた揮発性有機化合物の探索に必要な分析条件
高分解能LC/MSを用いた難揮発性有機化合物の探索に必要な分析条件

分析機関に試料水を送付してGC/MSまたは高分解能LC/MSの分析結果を得ることを想定して、仕様書例(GC/MS)および仕様書例(高分解能LC/MS)を準備しました。必要に応じて、ご活用ください。なお、あくまで例にしか過ぎず、サンプル毎、想定する化学物質毎に最適化が必要です。どのような化学物質が含まれているのか不明なサンプルを対象に、検出された可能性がある化学物質を明らかにする目的での使用などを想定しています。可能性がある化学物質を明らかにすることで、詳細な検討に繋げられると考えています。

探索の手順

IDとパスワードを取得されたら、本ページ上部の「ID/パスワードをお持ちの方(本研究会が管理・運営する学外のサーバに接続されます)」をクリックして、取得したID/パスワードを用いて化学物質探索システムに接続してください。

GC/MSによる測定結果の場合

環境水などの試料を測定した結果の他に、ノルマルアルカンの混合標準液(市販されています)を測定した結果をご用意いただくと、より確度の高い物質推定が可能です。ご用意いただいた場合に正確な物質推定できる確率は、流入下水中の有機物を対象に本研究会で検討した結果、90%でした(2022年7月13日現在、投稿準備中)。ただし、物質推定できる物質数が別表1(ログインすると確認できます)に記載されている3,377物質に限定されてしまいます。ご用意にあたっては、同一のGC-MS、同一の分離カラム、同一の条件で、可能な限り電源をオフにしたり真空を解除したりせずに、試料と混合標準液を測定してください。

ノルマルアルカンの混合標準液を測定した結果をご用意いただかなくても、物質推定が可能です。その場合の正確な物質推定できる確率は、流入下水中の有機物を対象に本研究会で検討した結果、72%でした(2022年7月13日現在、投稿準備中)。誤った物質を推定してしまう確率が高くなりますが、7,086物質の中から探索可能です。

試料の測定結果と混合標準液の測定結果は、必ずANDI/netCDF形式に変換してください。通常、GC-MSに付属するデータ表示ソフトには、測定結果のファイル形式をANDI/netCDF形式に変換する機能が備わっています。

本システムにアップロードする際は、試料の測定結果とノルマルアルカン混合標準液の測定結果を1つのフォルダに格納し、zip形式に変換してください。ノルマルアルカン混合標準液の測定結果を省略する場合、zip形式に変換する必要はございません。ANDI/netCDF形式のファイルをアップロードしてください。

高分解能LC/MSによる測定結果の場合

測定機器より取り出した、いわゆる生データではなく、分子式を推定した結果をアップロードする必要があることにご注意ください。通常、高分解能LC-MSには、測定結果から分子式を推定する解析ソフトが付属しています。

アップロードするファイルの書式は、下記のとおりです。分子式は、必ずHill方式(構成元素の順番は、炭素、水素、以下はアルファベット順)で記述してください。また、分子式に、無用なスペースが入らないようにご注意ください(スペースは、エクセルの置換機能を利用して、""(文字列なし)に一括置換すれば除去可能です)。ピーク面積の値は、エクセルのround関数などを用いて、必ず整数にしてください(カラム保持時間(リテンションタイム、RT)は、整数にする必要はありません)。A列:分子式(Hill方式、スペースなし)、B列:ピーク面積またはピーク容積(整数)、C列:カラム保持時間(リテンションタイム)、単位は自由です。形式は、CSV形式(CSV UTF-8ではありません)です。セルの書式が「通貨」や「文字列」ではなく標準になっていることをご確認ください。異性体が検出されている場合は、すべての異性体にカラム保持時間(リテンションタイム、RT)を付与してください。

測定データのANDI/netCDF形式、zip形式への変換
高分解能LC/MSを用いた難揮発性有機化合物の探索に必要な分析条件

アップロード

分析結果が用意できたら、本システムにアップロードしてください。アップロードに成功すると、「依頼が登録されました。」表示され、受付番号が表示されます。受付番号を控えておいてください。表示されない場合には、アップロードするデータを再度ご確認ください。「OK」をクリックすると、自動的に「探索結果一覧」の画面に遷移し、受付番号がリストの最上部に現れます。

検出された可能性がある硝化阻害物質を、影響が大きいと予測された順番に表示します。また、緊急的な阻害緩和措置を提案します。また、硝化阻害物質以外についても、検出された可能性がある物質をピーク面積が大きい順番に表示します。

アップロードするファイル名にご注意ください

ファイル名は、半角の英数字と半角のアンダーバー(_)だけで記述してください。日本語キャラクターなどをご使用になると、探索できないことがあります。

ファイル名に、組織名やユーザー名などの特定に繋がるような情報が含まれないようにご注意ください。探索された結果は、本システム上に表示され、他のユーザーがアクセスできます。

探索システムからのデータの削除をご希望の場合には、envchemkagoshimaアットgmail.com(アットを@に変更してください)までご連絡をお願いします。以下に、データ削除の依頼メールの文例を示します。フリーメールアドレス、匿名で依頼可能です。


件名:データ削除依頼

化学物質探索システムからのデータ削除を依頼します。

受付番号:XXXXXXXXXXXX(Xには、削除を依頼したい受付番号を入力)

私は、上記受付番号の探索依頼者に相違ありません。


可能な限り速やかに削除します。

化学物質探索システムの探索依頼画面
化学物質探索システムの探索結果一覧画面
化学物質探索システムの探索結果画面

探索が可能な試料と物質

探索が可能な試料は、流入下水や河川水、水道水などの水試料を想定していますが、基準を満たすGC/MSか高分解能LC/MSで網羅分析した結果があれば、下水放流水、処理工程の水、河川水、排水、水道水などの水試料、食品などの水試料以外であっても探索が可能です。

探索が可能な物質は、別表1(2022年7月13日更新)(システムからダウンロードできます)に記載した物質のうち、有意に検出されて適切に情報整理された物質です。探索対象物質の物質数は、2022年7月13日現在、36,436物質です。その内訳を下表に示します。

探索可能な化学物質

探索対象物質選定の基準は、以下のとおりです。

1)硝化阻害活性クラスが付与されている物質(2020年9月時点、共同研究体調べ、「硝化阻害活性クラス・生態毒性クラスの分け方」参照)

2)化管法対象物質(第一種指定化学物質、特定第一種指定化学物質、第二種指定化学物質)(平成20年11月21日公布)

3)化審法対象物質(第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、優先評価化学物質、監視化学物質、一部の一般化学物質)(令和2年7月時点)

4)生態毒性クラスが付与されている物質(「硝化阻害活性クラス・生態毒性クラスの分け方」参照)

5)水道水カビ臭原因物質(2-MIB、geosmin)、水道水生ぐさ臭原因候補物質(FX)

化審法一般化学物質は、2018年度に当該化学物質を年間1トン以上使用した事業所が存在し、化審法に基づいて届出がなされた化学物質が含まれる官報公示整理番号に該当する化学物質すべてを探索します。ただし、6類と7類の多くは構造を特定できないために対象外です。

ただし、基本的に以下の物質を除きます(除かれていない物質が残ってしまっています)

・無機物質

・炭酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、EDTA、アンモニア、乳酸、酒石酸の塩および錯体

・ダイオキシン類

・水銀およびその化合物(水銀以外の金属/半金属を含む化合物は、ICP/MSなどで測定することを基本としており本システムの適応対象外ですが、可能な限り別表1に収録しています。しかし、電子イオン化法や大気圧イオン化法などでイオン化した際に、収録された化学種の形態ではイオン化されずに検出できないことが予想されます。一部、大気圧イオン化法でイオン化した際に検出されると予想される化学種の形態を追加登録しています。)

・水に不溶な化学物質

・重合度分布の広いポリマーや複雑なMarkush構造など、CAS RNから分子式または立体配置が定まらずに質量分析で探索不能な化学物質(エナンチオマーなどの立体配置異性体は、分離分析が困難な場合があることやラセミ体などの混合物として使用されることがあること、混合物としてマススペクトルが登録されていることがあることから、構造が定まっていると取り扱うことがあります。)

・分子量(モノアイソトピック質量)が500以上の化学物質

・沸点が25˚C以下の化学物質

・安定同位体標識試薬

化審法対象物質は、化審法官報整理番号によって複数の物質がまとめられている場合があります。化管法対象物質は、政令番号によって複数の物質がまとめられている場合があります。そのような場合、一部の物質は、代表的な物質のみを探索します。化審法官報整理番号や政令番号と個別物質の構造との紐づけは、化審法データベース(J-CHECK)、NITE 化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)、the National Institutes of Health (NIH) PubChemなどを参考にして、研究会が独自に行いました。PubChemにCAS RNが登録されていない物質、および立体配置が登録されていない物質は、基本的に探索できません。

法的に定められている化学種の他に、例えばナトリウム塩は酸として探索するなど、水環境中から回収され、大気圧イオン化法でイオン化した際に検出されると予想される化学種をあわせて探索します(ナトリウム塩と共役酸の両方が検出された場合、両方を検出する仕組みとなっています)。同様に、水中で加水分解されると予想される物質は加水分解物として探索します。ただし、別表1には、未対応の物質が含まれます。順次、改善予定です。また、質量分析が可能か否かは未確認です。

本システムは、検出が示唆された化学物質のCAS RNを表示しますが、CAS RNは最終的に確認されたものではありません。CAS RNが不明な物質のCAS RNは、0000-00-0と表示されます。

別表1に記載された物質のうち硝化阻害物質の検出が示唆された場合には、物質名などに加えて緊急的な阻害緩和措置を提案します。硝化阻害物質以外の物質の検出が示唆された場合については、緊急的な阻害緩和措置を提案しませんが、物質名等を表示させることができます。

別表1には、CAS RNを表示できません。ご興味のある化学物質が別表1に収録されているか否かは、化学物質の名称またはPubChem CIDで検索してご確認ください。なお、化学物質には、数多くの別名が存在します。別表1には、ある特定の名称しか収録されていません。化学物質の別名は、J-CHECK、NITE-CHRIP、試薬メーカーのホームページなどでご確認ください。CAS RN、英語物質名などの手がかりからご興味のある物質をPubChemで検索し、Synonymsをご確認いただくのも有効です。

探索結果に関するご相談

研究会は、無料にて、探索結果に関するご相談を承ります。ただし、内容などによってはご相談をお受けできない場合や、専門のコンサルタントをご紹介させていただくことがございます。また、解析の条件についてのご質問はお受けできませんので、ご了承ください。

ご相談は、envchemkagoshimaアットgmail.com(アットを@に変更してください)までお願いします。その際、必ず、探索結果一覧の受付番号、ご相談の目的・内容、ご担当者のご所属とお名前およびご連絡先を明記してください。

以下に、ご相談いただく際のメール文例を示します。


件名:受付番号202107070012に関する相談

[相談の目的・内容]〇〇〇〇〇〇〇〇

[相談者の所属]〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

[相談者の氏名]〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

[相談者の連絡先メールアドレス]〇〇〇〇〇〇〇〇〇

[相談者の連絡先電話番号]〇〇〇〇〇〇〇〇〇

ご質問、不具合などのご連絡

ご質問、不具合などのご連絡は、envchemkagoshimaアットgmail.com(アットを@に変更してください)までお願いします。

免責・注意事項

2021年8月16日制定

1.はじめに

化学物質探索システム(以下、本システム)は、国土交通省下水道応用研究「下水処理場における硝化阻害物質の高効率探索システムの開発」(参画機関:国立大学法人鹿児島大学、国立研究開発法人土木研究所、いであ株式会社)により開発されたシステムを鹿児島大学・土木研究所・いであ共同研究体が改良したシステムであり、鹿児島大学工学部環境化学研究室が事務局を務める化学物質探索システム研究会が運営しています。どなたでも無償にてご利用いただけます。探索結果の利用に制限はありません。

2.化学物質探索システム公開の目的

試料中に含まれる硝化阻害物質、生態影響物質、PRTR対象物質、日本において一定程度の製造量または輸入量が報告されている物質の自主管理に資することを目的としています。とくに、下水流入水に含まれる硝化阻害物質を想定し、物性値に基づく緊急的な阻害緩和措置を提案することを目的としています。

3.ご注意

本システムは、別表1に掲載した物質が検出されたこと、または検出されなかったことを保証するものではありません。本システムの不具合、使用、結果、閲覧等に起因、または関連して生じたいかなる不利益、損害、損失、費用等について、国土交通省、国立大学法人鹿児島大学、国立研究開発法人土木研究所、いであ株式会社、鹿児島大学・土木研究所・いであ共同研究体、鹿児島大学工学部環境化学研究室、化学物質探索システム研究会、それらの下部組織およびそれらに所属する個人はいかなる責任を負いません。本システムにおいて提供する情報の正確性については、万全を期しておりますが、いかなる保証をするものではありません。また、掲載内容等は、予告なく中断、変更、修正、削除等を行うことがあります。

本システムは、アップロードされた測定結果を保存することがありますが、利用者を特定することはありません。化学物質探索システム研究会は、保存された結果を学術目的で利用することがあります。本システムにアップロードしたデータおよび解析結果は、予告なしに本システムから消去することがあります。

以上

文責:化学物質探索システム研究会

探索の仕組み

GC/MSによる測定結果の場合

試料の測定により得られたマススペクトルとライブラリに収録されているマススペクトルの類似度が70以上と高い場合、ライブラリに収録されている当該物質の物質名などが表示されます。類似度は、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)のAutomated Mass Spectral Deconvolution and Identification System(AMDIS)を用いて求めたmatch parametersのうちnet valueで評価しています。

高分解能LC/MSによる測定結果の場合

試料の測定により推定された分子式とライブラリに収録されている分子式が完全に一致した場合、ライブラリに収録されている当該物質の物質名などが表示されます。ライブラリに異性体が収録されている場合、すべての異性体が表示されます。異性体が検出された場合、検出された数だけ表示されます。

硝化阻害活性クラス・生態毒性クラスの分け方

硝化阻害活性クラス・生態毒性クラスは、鹿児島大学・土木研究所・いであ研究共同体で独自に付与したクラスであり、相対的な硝化活性、相対的な生態毒性の目安です。

硝化阻害活性クラス

共同研究体が、1)アンモニア酸化細菌を用いて硝化阻害活性を測定した結果、2)活性汚泥を用いて硝化阻害活性を測定した結果、3)文献研究により明らかにした結果、4)定量的構造活性相関を用いて硝化阻害活性を予測した結果を用いて、硝化阻害活性クラスを1~3とクラス外に分類しています。クラス1が最も硝化阻害活性が高く、クラス外が最も硝化阻害活性が低い物質です。文献研究により明らかにした結果は、他の文献と比較するなど、研究共同体で独自に評価して利用している場合があります。定量的構造活性相関で予測した結果は、本来であればOECDの5原則に基づいたバリデーションが必要ですが、硝化阻害試験のデータ数が少ないことなどの理由により実施できていません

探索に供した質量分析結果内で、探索された各物質のピーク面積(あるいはピーク容積。以下、ピーク面積)を求めます(高分解能LC/MSの結果の場合は、アップロードしていただいたピーク面積値をそのまま用いています)。探索された各物質をピーク面積値でソートし、上位25%以内をピーク面積クラス1、上位25~50%をピーク面積クラス2、上位50~75%をピーク面積クラス3、上位75から最もピーク面積値が小さい物質をピーク面積クラス外としました。

探索の結果、複数の物質の検出が示唆された場合には、硝化阻害クラスとピーク面積クラスに応じて、表:表示クラスに従い表示されます。同じ表示クラスに複数の物質がある場合には、ピーク面積値の大きい順に表示されます。

生態毒性クラス

共同研究体が調査した、1)環境省初期リスク評価書1-16巻、2)その他の環境省の資料、3)GHS政府分類(平成30年9月時点)、4)環境省生態影響試験結果のOECDカテゴリ、5)AIST-MeRAMの結果に基づいてクラスを分類しています。1)、2)、5)については、慢性毒性値に基づくPNEC≤1 µg/Lと評価された物質はクラス1、1<PNEC≤10 µg/Lはクラス2、PNEC>10 µg/Lはクラス3と評価しました。3)については、水生環境有害性長期(慢性)の区分が1の物質はクラス1、2の物質はクラス2、3の物質はクラス3と評価しました。4)については、OECDカテゴリIの物質はクラス1、IIの物質はクラス2、IIIの物質はクラス3と評価しました。クラス1が最も水生生物に対する慢性毒性が最も強く、クラス3が最も弱い物質です。

1)~5)で複数の評価結果が得られた場合には、1)→2)→3)→4)→5)の優先順位で分類結果を採用しました。


以上の考え方につきましては、ご批判もあろうかと存じます。ご利用いただく皆様からのご意見、ご指摘を参考にさせていただき、継続的な改善を図って参る所存です。ご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。

化学物質探索システムにおける表示クラス 表示クラス
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